育成就労を3年間終えれば、自動的に特定技能1号へ移れるわけではありません。
原則として、特定技能1号への移行に必要な技能試験と日本語試験の両方に合格し、特定技能1号への在留資格変更許可を受ける必要があります。技能実習2号の良好修了者にある試験免除とは異なり、育成就労から移る場合は試験合格が基本です。法務省
2026年9月現在、技能は技能検定3級、育成就労評価試験の専門級、特定技能1号評価試験などから分野・業務区分ごとに定められています。日本語は基本的にA2相当以上ですが、現在の分野別運用方針ではA2.2相当以上や、さらに高い水準を求める業務区分もあります。法務省
3年後に必要なのは「技能」と「日本語」の両方
育成就労は、原則3年間の就労を通じて、特定技能1号水準まで人材を育てる制度です。
受入れ企業は育成就労計画を作る段階で、3年間の「育成就労の目標」となる技能試験と日本語試験を設定します。そして、育成就労終了までに外国人へ両方の試験を受験させる必要があります。オティット
大きく整理すると、3年間の流れは次のようになります。
| 時期 | 技能 | 日本語 |
|---|---|---|
| 就労開始前 | 原則として技能要件なし | 原則A1相当以上の試験、または一定の日本語講習 |
| 1年経過時まで | 初級・基礎級相当の試験 | 分野別に定める中間水準 |
| 3年終了時 | 3級・専門級・特定技能1号評価試験など | 原則A2相当以上 |
| 特定技能1号への移行 | その業務区分で認められる技能を証明 | その分野で定める日本語試験に合格 |
具体的にどの試験を使うかは、17分野共通ではありません。外国人が働いている「分野」だけでなく、「業務区分」と育成就労計画で設定した主たる技能まで確認します。法務省
技能は「3級を取れば全員OK」ではない
出入国在留管理庁のQ&Aでは、特定技能1号へ移る際の技能要件として、技能検定3級等または特定技能1号評価試験への合格が示されています。法務省
ただし、すべての分野で技能検定3級を使うわけではありません。
育成就労終了時の技能試験には、業務区分によって、
- 技能検定3級
- 3級相当の育成就労評価試験(専門級)
- 特定技能1号評価試験
などがあります。どれを育成就労の目標にできるかも、分野別運用方針で決められています。オティット
たとえば建設では育成終了時に育成就労評価試験の専門級または技能検定3級、特定技能1号では特定技能1号評価試験または技能検定3級などが示されています。農業では育成終了時に専門級、特定技能1号では特定技能1号評価試験が示されています。法務省
つまり、「3年目だから○○試験を受ける」と全社共通で決めるのではなく、その外国人の業務区分に対応する試験を確認する必要があります。
育成就労の目標試験と特定技能1号の試験が同じとは限らない
ここは企業側が特に注意したいところです。
育成就労計画で設定する「3年間の目標となる技能試験」と、特定技能1号へ在留資格を変更するための技能試験が、業務区分によっては完全に同じとは限りません。
運用要領では、育成就労の目標として設定した技能試験に不合格でも、その業務区分の特定技能1号への変更に必要な別の技能試験に合格すれば、特定技能1号への変更に必要な技能を証明できる場合があるとされています。オティット
たとえば、育成就労の目標として技能検定等を設定して不合格だったとしても、同じ業務区分に対応する特定技能1号評価試験に合格すれば、特定技能1号への変更に必要な技能を証明できる場合があります。
ただし、その場合でも「育成就労計画で設定した目標を達成した」ことにはなりません。オティット
そのため3年目になったら、
育成就労計画で設定した試験
と
特定技能1号への変更に使える試験
を一度照合しておく必要があります。
日本語は基本A2相当以上だが分野ごとに確認する
出入国在留管理庁の制度全体の説明では、特定技能1号への移行に必要な日本語能力は、基本的に日本語教育の参照枠A2相当以上で、日本語能力試験(JLPT)のN4等が例として挙げられています。法務省
ただし、現在の分野別運用方針では、A2をさらに細かくした「A2.2相当以上」を育成終了時・特定技能1号の基準としている分野が多くあります。
たとえば工業製品製造業では、特定技能1号の日本語要件として国際交流基金日本語基礎テストのA2.2相当以上、または日本語能力試験N4以上が示されています。法務省
そのため、「A2なら何でもよい」と判断するのではなく、実際にその分野で認められている試験名まで確認します。
介護は日本語試験が1つ増える
介護分野では、一般的な日本語試験だけを見てはいけません。
特定技能1号へ移るには、技能について介護特定技能評価試験などが必要で、日本語については国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験N4以上に加えて、「介護日本語評価試験」への合格も必要です。厚生労働省
育成就労終了時についても、A2.2相当以上と介護分野の日本語評価が設定されています。
介護では「N4に合格したから特定技能へ移れる」と日本語要件を1つだけで判断しないことが重要です。
鉄道の運輸係員はB1相当以上が必要
もう一つ大きく違うのが鉄道分野の「運輸係員」です。
鉄道の軌道整備、電気設備整備、車両整備、車両製造、駅・車両清掃などでは、特定技能1号の日本語要件はA2.2相当以上ですが、運輸係員についてはB1相当以上が設定されています。法務省
具体的には、国際交流基金日本語基礎テストのB1相当以上、または日本語能力試験N3以上で一定の条件を満たすことなどが示されています。
駅係員、車掌、運転士など、日本語によるコミュニケーションが特に重要な業務のためです。法務省
このように、特定技能1号への日本語要件は「全員N4」と覚えないほうが安全です。
3年間働いただけでは試験免除にならない
技能実習制度との違いも重要です。
現在の制度では、技能実習2号を良好に修了した外国人が関連する特定技能1号へ移る場合、原則として技能試験と日本語試験が免除される仕組みがあります。
育成就労には、この「3年働けば試験免除」という仕組みはありません。
育成就労から特定技能1号へ移る場合は、原則として技能・日本語の試験合格が必要です。法務省
そのため企業も、「育成就労を3年間問題なく終えれば、そのまま特定技能に書き換えられる」と考えないようにします。
特定技能1号に変わるには在留資格変更の申請も必要
技能・日本語試験に合格しても、その日から自動的に特定技能1号になるわけではありません。
外国人と受入れ企業が特定技能の要件を満たし、特定技能雇用契約を締結します。1号特定技能外国人を受け入れる場合は、受入れ企業が1号特定技能外国人支援計画を作成し、地方出入国在留管理局へ在留資格変更許可申請を行います。法務省
支援は会社自身で行うほか、登録支援機関へ委託することもできます。
つまり3年目には、
試験合格
→特定技能の雇用契約
→支援体制・支援計画
→在留資格変更許可
まで準備して初めて、特定技能1号で引き続き働ける状態になります。
同じ会社でそのまま働いてもらう場合も手続は必要
育成就労を行った会社が、そのまま特定技能1号でも雇用することはできます。
ただし、同じ会社だから育成就労の契約や監理体制をそのまま延長するわけではありません。
特定技能1号では、会社が「特定技能所属機関」として基準を満たし、特定技能雇用契約や1号特定技能外国人支援計画など、特定技能制度側の要件を満たす必要があります。法務省
監理型育成就労で利用していた監理支援機関と、特定技能で利用する登録支援機関も別制度です。
同じ団体が両方に対応する場合はありますが、「監理支援機関だからそのまま特定技能の支援も任せられる」とは限りません。
3年目の試験に落ちたらすぐ帰国とは限らない
特定技能1号への移行に必要な技能・日本語試験に合格できなかった場合でも、3年経過と同時に必ず帰国しなければならないわけではありません。
一定の条件を満たせば、再受験のために最長1年間、育成就労を継続できる仕組みがあります。オティット
ただし、「不合格なら自動的に4年目へ入れる」という制度でもありません。
運用要領では、認定された育成就労計画に沿って適正に育成を行ったにもかかわらず目標試験に合格できなかった場合や、傷病・天災などやむを得ない事情で期間内に試験を受けられなかった場合などが対象とされています。
また、延長できる期間も一律1年ではなく、再受験と合否確認に必要な期間を基に判断され、最大が1年です。オティット
最初から「3年目で落ちてもあと1年ある」と考えて試験を遅らせる制度ではありません。
試験は3年終了直前に初めて受ければよいわけではない
育成就労実施者には、育成就労計画で設定した3年終了時の技能・日本語試験を、育成就労期間内に外国人へ受験させる義務があります。オティット
さらに、試験の受験手数料、交通費、材料費などを外国人本人へ負担させることはできず、受入れ企業または監理支援機関が負担します。
法令上受験が必要な試験に要する時間は労働時間として扱われるため、試験日を欠勤扱いにしたり、有給休暇を使わせたりすることも認められていません。オティット
会社側では「本人が自分で試験を予約して合格してください」と完全に任せるのではなく、受験時期まで育成計画の中で管理する必要があります。
3年目に確認するのでは遅い
特定技能1号への移行を予定しているなら、3年間の終了直前になって試験状況を確認するのではなく、2年目から3年目にかけて準備を進めたほうが整理しやすくなります。
まず育成就労計画を見て、その外国人について設定した「育成終了時の技能試験」と「日本語試験」を確認します。
次に、特定技能1号の同じ業務区分について、在留資格変更に使える技能試験と日本語試験を確認します。
そして、試験日程と合格発表日から逆算して受験時期を決めます。
特定技能1号でも同じ会社で雇用するなら、特定技能雇用契約、支援計画、自社で支援するのか登録支援機関へ委託するのかも並行して決めます。法務省
特に重要なのは、「育成就労3年終了時の試験」と「特定技能1号への変更に必要な試験」を同じものだと思い込まず、業務区分ごとに照合することです。
育成就労の途中で特定技能1号へ移ることもある
原則は3年間で特定技能1号水準まで育てる制度ですが、必ず3年終了まで特定技能1号へ移れないわけではありません。
出入国在留管理庁は、特定技能1号への技能・日本語要件を満たし、さらに現在の育成就労実施者の下で一定期間以上働いている場合には、育成就労途中から特定技能1号への移行を認める方針を示しています。法務省
ただし、「試験に早く合格したからすぐ特定技能へ変更できる」とは限りません。
通常の3年終了時とは別の条件があるため、途中移行を予定する場合は、その時点の最新の運用要領を確認します。
まとめ
育成就労から特定技能1号へ移るには、3年間勤務しただけでは足りません。
原則として、分野・業務区分ごとに定められた技能試験と日本語試験へ合格し、特定技能1号への在留資格変更許可を受ける必要があります。技能実習2号良好修了者のような一律の試験免除はありません。法務省
技能は、技能検定3級、育成就労評価試験の専門級、特定技能1号評価試験などから分野ごとに定められます。日本語は基本的にA2相当以上ですが、実際の分野別基準ではA2.2相当以上を求めるケースが多く、介護では介護日本語評価試験、鉄道の運輸係員ではB1相当以上などの追加・上乗せがあります。法務省
会社が最初にするのは、3年目の外国人について、育成就労計画に記載した技能・日本語試験と、その業務区分の特定技能1号への変更に必要な試験を並べて確認することです。
合格状況だけでなく、試験日・合格発表日、特定技能雇用契約、支援計画、在留資格変更申請まで逆算しておけば、3年間の終了時に「試験は終わったが在留資格変更が間に合わない」という状態を防ぎやすくなります。