育成就労は何年で転籍できる?|本人意向転籍の1年・2年ルールを確認

育成就労外国人が本人の希望で別の会社へ転籍できる時期は、一律に「1年後」ではありません。

本人意向による転籍には「転籍制限期間」があり、2026年9月現在、育成就労の分野ごとに1年または2年と定められています。さらに2年の分野でも、受入れ企業が育成就労計画で転籍制限期間を1年とすることができます。

そのため、実際に「この外国人はいつから転籍できるのか」を確認するときは、分野名だけでは足りません。

①どの分野か → ②その会社が育成就労計画で何年に設定したか → ③技能・日本語など他の転籍要件を満たしているか

の順で確認します。

本人意向転籍は1年または2年

育成就労制度では、技能実習制度と異なり、一定の条件を満たせば外国人本人の希望による転籍が認められます。

ただし、就労を始めてすぐ自由に会社を変えられるわけではありません。

政府は転籍制限期間を原則として1年に近づける方針としていますが、制度開始当初は人材育成や人材確保への影響を考慮し、分野ごとに1年から2年の範囲で設定しています。

2026年1月に決定された分野別運用方針では、次のように分かれています。

転籍制限期間育成就労分野
1年ビルクリーニング、宿泊、鉄道、物流倉庫、農業、漁業、林業、木材産業、リネンサプライ
2年介護、建設、造船・舶用工業、自動車整備、外食業、工業製品製造業、飲食料品製造業、資源循環

航空と自動車運送業は育成就労の対象分野ではないため、この表には入りません。

2年の分野でも会社が1年に短縮できる

ここが「1年・2年ルール」で特に誤解しやすいところです。

例えば建設、介護、工業製品製造業などは、分野別運用方針では転籍制限期間が2年です。

しかし、必ず2年間その会社にいなければ本人意向転籍ができないわけではありません。

分野で2年と定められていても、受入れ企業が自社の育成就労計画で、

「育成就労実施者の変更を制限する期間を1年とする」

と定めることができます。

例えば同じ建設分野でも、A社が2年、B社が1年と設定することがあり得ます。

したがって、「建設だから2年」「介護だから2年」と分野だけを見て判断するのではなく、その外国人について認定された育成就労計画を確認する必要があります。

2年を選ぶ会社には待遇向上が求められる

2年分野で会社が転籍制限期間を2年とする場合には、単に「2年間辞めにくくできる」という仕組みにはなっていません。

1年を超える転籍制限期間を設定する企業には、就労開始から1年を経過した後、分野ごとに定められた基準に基づいて昇給などの待遇向上措置を講じることが求められます。

一方、企業が自主的に転籍制限期間を1年とした場合、この「1年を超えて転籍を制限することに伴う待遇向上措置」は適用されません。

例えば飲食料品製造業では、2年間の転籍制限を設定する企業について、1年目から2年目にかけて分野で設定される昇給率に基づく昇給を行う仕組みが定められています。

企業側も、転籍制限期間を1年にするか2年にするかを採用時に検討する必要があります。

1年・2年たてば自動的に転籍できるわけではない

転籍制限期間は、本人意向転籍の条件の1つにすぎません。

期間を経過しただけで、自動的に好きな会社へ移れるわけではありません。

本人意向による転籍では、分野ごとに定められた技能・日本語能力を満たしていることや、転籍先となる企業が所定の要件を満たしていることなども必要です。

一般的な基準では、本人意向転籍時の技能について育成就労評価試験の初級、日本語について「日本語教育の参照枠」のA2.1相当以上が示されていますが、分野によって異なる要件が設定される場合があります。

つまり、

「1年たった=転籍可能」

ではなく、

「転籍制限期間を満たしたうえで、技能・日本語・転籍先などの要件も満たす」

必要があります。

転籍先もどこでもよいわけではない

本人意向転籍では、転籍先となる企業にも条件があります。

転籍先は、技能や日本語能力の育成実績などに照らして「優良な育成就労実施者」であることが求められます。

また、本人意向で転籍してきた外国人が転籍先の育成就労外国人全体に占める割合にも制限があります。原則として、本人意向転籍者が転籍後の育成就労外国人全体の3分の1を超えないことなどが条件です。

本人が転籍したい会社を見つければ、それだけで転籍できる制度ではありません。

新しい受入れ企業が転籍する外国人について新たな育成就労計画を作成し、認定を受ける必要があります。

転籍は同じ業務区分内で行う

本人意向による転籍では、原則として同じ業務区分内で別の育成就労実施者へ移ります。

例えば全く別の分野へ自由に移るための制度ではありません。

同じ業務区分内であれば、転籍前後で主たる技能を変更すること自体は可能とされていますが、人材育成の観点から主たる技能を変更することは望ましくないとされています。

そのため、転籍希望を受けた企業は「別の会社へ移りたい」という本人の希望だけでなく、転籍後も同じ業務区分で育成就労を続けられるかを確認します。

1年・2年になる前でも転籍希望は申し出られる

「転籍制限期間が終わるまで、転籍の話自体をしてはいけない」という意味でもありません。

本人が転籍を希望した場合、転籍制限期間をまだ経過していなくても、監理支援機関などによる転籍先探しの支援は必要とされています。

実際に本人意向転籍として新しい会社で育成就労を開始する時点では転籍制限期間を満たす必要がありますが、本人からの申出や転籍先探しまで期間満了後に待つ必要はありません。

そのため企業側は、

「まだ1年たっていないから転籍希望は受け付けない」

という対応にはしないよう注意が必要です。

「やむを得ない事情」がある転籍には1年・2年ルールを当てはめない

転籍制限期間が問題になるのは、本人の意向による転籍です。

暴力やパワーハラスメントなどの人権侵害、重大・悪質な法令違反や契約違反など、「やむを得ない事情」がある場合の転籍は別に扱われます。

この場合、本人意向転籍で求められる転籍制限期間を経過するまで待つ必要はありません。

したがって、就労開始から半年の外国人から「会社を変わりたい」と言われた場合も、

「1年経っていないから転籍できない」

と先に結論を出すのではなく、まず転籍を希望する理由を確認します。

単に本人の希望で会社を変えたいのであれば転籍制限期間を確認しますが、暴力・ハラスメントなどが背景にあるなら、やむを得ない事情による転籍として別に確認する必要があります。

一度転籍した後にもう一度転籍する場合も期間を確認する

本人意向転籍は、最初の1回だけ転籍制限期間が適用されるわけではありません。

本人意向で別の会社へ転籍した後、さらに本人意向で別の会社へ転籍しようとする場合も、直近の受入れ企業で改めて転籍制限期間を経過する必要があります。

例えば転籍制限期間が1年のケースで、A社からB社へ本人意向転籍したからといって、B社へ移った直後にC社へ自由に移れるわけではありません。

直近の受入れ企業での育成期間を基準に、もう一度確認します。

企業はどこを見れば転籍可能時期が分かる?

育成就労外国人から「いつ転籍できますか」と聞かれた場合は、まず本人の育成就労計画を確認します。

特に見るのは、育成就労計画に記載された**「育成就労実施者の変更を制限する期間」**です。2年分野でも企業が1年を選択していれば、ここにその内容が反映されます。

そのうえで、本人が転籍に必要な技能・日本語試験を満たしているか、同じ業務区分で転籍するのか、転籍先が要件を満たしているかを確認します。

整理すると、確認順は次のとおりです。

分野の転籍制限期間 → 本人の育成就労計画で1年・2年のどちらか確認 → 就労期間を確認 → 技能・日本語要件を確認 → 転籍先の要件を確認

期間だけで判断しないことがポイントです。

「1年たったから転籍できる」と決めない

育成就労の本人意向転籍は、1年または2年という期間だけを見ると単純に見えます。

しかし実際には、2年分野でも企業が1年を選択でき、技能・日本語能力や転籍先にも条件があります。

そのため企業側が最初に確認するのは、

「この分野は1年か2年か」ではなく、「この外国人の認定された育成就労計画では何年になっているか」

です。

さらに、転籍希望の理由に暴力やハラスメントなどが含まれていれば、本人意向転籍とは別の「やむを得ない事情による転籍」の可能性があります。

本人から転籍の相談を受けたら、監理型育成就労では監理支援機関へ連絡したうえで、育成就労計画、就労開始日、転籍理由、技能・日本語の試験状況を確認するところから始めます。

出典

出入国在留管理庁|育成就労制度Q&A 公式ページ

出入国在留管理庁|育成就労制度の分野別運用方針 公式ページ

出入国在留管理庁|育成就労制度運用要領 公式ページ

出入国在留管理庁|育成就労制度の制度概要・関係法令 公式ページ