育成就労から特定技能1号へ移行するときの費用は、全国一律で「1人○万円」と決まっているわけではありません。
大きく分けると、在留資格変更の公的手数料、必要な技能・日本語試験の費用、申請を外部へ依頼する場合の報酬、特定技能1号の支援を登録支援機関へ委託する場合の費用があります。
ただし、育成就労の3年目までに特定技能1号への移行に使える技能・日本語試験へすでに合格しているなら、移行時に同じ試験をもう一度受ける必要はありません。
そのため、同じ会社で雇用を続け、自社で特定技能の支援と申請準備までできる会社と、登録支援機関や行政書士へ外部委託する会社では、必要な金額が大きく変わります。
2026年9月現在の制度を基に、何にいくらかかるのかを分けて見ていきます。
移行費用は4つに分けて考える
まず、育成就労から特定技能1号へ移るときに関係する費用を整理すると次のようになります。
| 費用 | 金額の考え方 | 必ず発生する? |
|---|---|---|
| 在留資格変更許可の手数料 | 許可される在留期間等で決まる | 原則必要 |
| 技能・日本語試験 | 分野・試験によって異なる | 未合格なら必要 |
| 在留資格変更の申請支援 | 行政書士等へ依頼する場合の報酬 | 自社対応なら不要 |
| 特定技能1号の支援 | 登録支援機関へ委託する場合の月額等 | 自社支援なら委託費不要 |
ここで「移行費用」と「特定技能になった後の毎月の費用」を分けることが重要です。
在留資格変更や試験は移行前後に発生する費用ですが、登録支援機関への支援委託費は、特定技能1号として働き始めた後も継続して発生する費用です。
在留資格変更には国への手数料がかかる
育成就労から特定技能1号へ移るには、地方出入国在留管理局へ在留資格変更許可申請を行います。
在留資格変更は申請しただけでは手数料が発生せず、許可を受ける際に手数料を納めます。
注意したいのは、2026年10月1日から在留許可手数料の制度が変わることです。
オンライン申請の場合、2026年10月1日以降は、許可される在留期間に応じて次の手数料になります。
| 許可された在留期間 | 手数料 | 決済手数料込み |
|---|---|---|
| 3か月以下 | 10,000円 | 10,330円 |
| 3か月超6か月以下 | 15,000円 | 15,330円 |
| 6か月超1年未満 | 21,000円 | 21,330円 |
| 1年 | 27,000円 | 27,330円 |
| 1年超3年未満 | 42,000円 | 42,330円 |
| 3年以上5年未満 | 56,000円 | 56,550円 |
特定技能1号の在留期間は、法務大臣が個々に指定する3年を超えない期間です。
したがって、移行時の在留資格変更手数料は一律27,000円などと決めつけることはできず、実際に許可された在留期間によって変わります。
さらに、育成就労制度自体が始まるのは2027年4月1日です。通常の3年間を終えて特定技能へ移行する時期はさらに先になるため、実際の申請時にはその時点の手数料を改めて確認する必要があります。
3年目の試験に合格済みなら移行時に試験代を二重に払わない
育成就労から特定技能1号へ移るには、原則として技能試験と日本語試験への合格が必要です。
ただし、これは「育成就労を終えた後に、新しく特定技能試験を受け直す」という意味ではありません。
育成就労では、3年間の育成目標として技能・日本語試験を設定し、会社は育成就労期間中に外国人へ試験を受けさせます。
その試験が特定技能1号への移行要件として認められる試験で、すでに合格しているのであれば、その合格を使って特定技能1号への移行を進められます。
そのため、移行費用を計算するときは、
まだ必要な試験が残っているか
を最初に確認します。
「特定技能へ変わるから技能試験代と日本語試験代を必ずもう一度計上する」という計算ではありません。
育成就労中の試験費用は本人負担にできない
育成就労期間中に受ける制度上必要な試験については、費用負担のルールも決められています。
技能・日本語など各種試験に必要となる受験手数料、交通費、材料費などは、育成就労外国人本人へ負担させることはできません。
育成就労実施者である会社または監理支援機関が負担します。
つまり、3年目に特定技能1号への移行を見据えた試験を受けてもらう費用は、基本的には「外国人本人が特定技能になるために自分で払う費用」ではなく、育成就労側で準備しておく費用です。
会社では、監理支援費に試験費用が含まれているのか、受験時に会社へ別請求されるのかを監理支援機関へ確認しておく必要があります。
試験費用は分野によって違う
特定技能1号評価試験の受験料は全国一律ではありません。
2026年9月現在、日本国内で実施される主な特定技能1号試験には、たとえば次のような料金があります。
| 試験例 | 受験料 |
|---|---|
| 建設分野特定技能1号評価試験 | 1,000円 |
| 介護特定技能評価試験 | 2,000円 |
| 自動車整備分野特定技能1号評価試験 | 4,300円 |
| 木材産業特定技能1号測定試験 | 4,400円 |
| 宿泊分野特定技能1号評価試験 | 7,700円 |
| 農業技能測定試験1号 | 8,000円 |
| 飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験 | 8,000円 |
| 製造分野特定技能1号評価試験 | 8,000円 |
| 国際交流基金日本語基礎テスト | 10,000円 |
外国人がどの試験を受けるかは、育成就労の分野・業務区分によって異なります。
技能検定3級など別の試験を利用する業務区分もあるため、「技能8,000円+日本語10,000円=18,000円」と全員一律には計算できません。
また、介護では一般の日本語試験に加えて介護日本語評価試験などが関係するため、分野ごとの移行要件まで確認します。
不合格なら再受験分の費用が増える
育成就労3年目に必要な技能・日本語試験へ合格できなかった場合には、一定の条件の下で最長1年間、育成就労を継続して再受験できる仕組みがあります。
その場合は、再受験の受験料や交通費などが追加で発生します。
つまり会社側の試験費用は、
1回で合格した場合の金額
だけではなく、
再受験になった場合にどこまで会社または監理支援機関が負担するか
も見ておいたほうがよいでしょう。
育成就労期間中の制度上必要な試験であれば、受験費用を本人へ転嫁することはできません。
行政書士などへ変更申請を依頼すれば別途報酬がかかる
在留資格変更許可の公的手数料と、申請書類の作成・申請支援を専門家へ依頼する費用は別です。
特定技能1号への変更では、外国人本人の資料だけでなく、特定技能所属機関となる会社側の資料、特定技能雇用契約、1号特定技能外国人支援計画、分野ごとに必要となる書類などを準備します。
会社で対応できれば、行政書士等への報酬はかかりません。
一方、行政書士へ申請書類の作成や申請取次ぎを依頼すれば報酬が必要です。
報酬は法律で全国一律に決まっているものではなく、事務所、会社の状況、分野、依頼範囲などによって異なります。
見積りを取る場合は、
「在留資格変更だけの料金なのか」
「特定技能雇用契約や支援計画の作成支援まで含まれるのか」
「分野別の協議会・届出関係まで含まれるのか」
を確認します。
単に「特定技能への変更○万円」という金額だけでは比較しにくい部分です。
特定技能になった後は登録支援機関の費用が加わる場合がある
育成就労中は監理型であれば監理支援機関が関わりますが、特定技能1号へ移行すると、監理支援機関による監理は終了します。
特定技能1号では、会社が支援計画を作成し、必要な支援を行います。
会社自身で支援できる体制があれば登録支援機関への委託費は必要ありません。
自社で対応せず登録支援機関へ支援を委託する場合は、委託料が継続して発生します。
登録支援機関の支援委託料には法律上の一律料金や上限額はありません。
出入国在留管理庁が公表している調査では、外国人1人当たりの支援委託料は月額平均28,386円で、30,000円以下が全体の約9割でした。
ただし、この公表値は令和4年9月末時点の暫定値です。
2026年に料金を掲載している支援事業者等を見ると、月額2万~3万円程度を一つの目安としている例が多くありますが、実際には支援内容、対応言語、地域、人数、初期支援を別料金にするかなどで変わります。
したがって、移行後の費用を試算するなら、現在利用している監理支援機関または候補の登録支援機関から最新の見積りを取る必要があります。
登録支援機関の「登録手数料28,400円」は会社が払う費用ではない
特定技能の費用を調べると「登録支援機関28,400円」という金額が出てくることがあります。
これは、会社が外国人1人を特定技能へ変更するために国へ払う費用ではありません。
登録支援機関になろうとする事業者自身が、出入国在留管理庁へ登録申請するときに払う手数料です。
すでに登録されている登録支援機関へ外国人の支援を委託する会社が、外国人1人につき28,400円を国へ払う仕組みではありません。
会社側が比較すべきなのは、その登録支援機関が提示する初期費用と月額支援委託費です。
同じ会社で移行するなら人材紹介料は通常の移行費用とは分ける
育成就労外国人を現在の会社がそのまま特定技能1号として雇用する場合、新しく海外から人材を紹介してもらうわけではありません。
そのため、外国人人材会社への新規採用の紹介料を「育成就労から特定技能への移行費用」として当然に計上する必要はありません。
一方、育成就労終了後に別の会社へ就職する場合などは、採用経路によって別の費用関係が生じる可能性があります。
この記事でいう移行費用は、基本的に「現在の育成就労外国人を特定技能1号へ切り替えて雇用を続ける場合」を想定しています。
会社の負担は大きく3パターンに分かれる
実際の会社負担は、どこまで自社で行うかによって変わります。
自社で支援・申請準備までできる場合
育成就労中に必要な試験へすでに合格しており、会社自身が特定技能1号の支援体制を持ち、申請準備も自社で行える場合です。
この場合、移行時の外部委託費をかなり抑えられます。
中心になるのは、
- 在留資格変更許可の公的手数料
- 必要な書類取得などの実費
です。
ただし、自社支援には支援責任者・支援担当者など制度上必要な体制が求められるため、「委託料がもったいないから自社支援にする」という理由だけでは決められません。
申請だけ外部へ依頼する場合
支援は自社で行うが、特定技能への在留資格変更手続を行政書士等へ依頼する場合です。
この場合は、
公的手数料+申請支援の報酬+書類取得等の実費
が移行時の主な負担になります。
登録支援機関にも委託する場合
在留資格変更に加えて、特定技能1号の支援を登録支援機関へ全部または一部委託する場合です。
この場合は、
移行時の費用+登録支援機関への継続的な委託費
で考えます。
月額2万~3万円なら、単純計算で年間24万~36万円程度です。
「特定技能への変更費用はいくらか」と聞いたときに30万円、50万円といった金額が出てくる場合、その中に1年間の支援委託費や申請代行費まで含んでいることがあります。
何か月分の費用なのかを確認しないと比較できません。
例えば1人を同じ会社で移行するならどう見る?
仮に、
- 育成就労中に必要な技能・日本語試験へ合格済み
- 同じ会社で特定技能1号として雇用
- 登録支援機関へ支援を全部委託
- 在留資格変更も外部へ依頼
という会社なら、費用を次のように分けて見ます。
| 費用 | 確認方法 |
|---|---|
| 在留資格変更許可手数料 | 許可された在留期間により決定 |
| 試験費用 | 合格済みなら移行時に再受験不要 |
| 申請支援費 | 行政書士等から見積り |
| 登録支援機関の初期費用 | 登録支援機関から見積り |
| 月額支援委託費 | 月2~3万円程度が一つの参考 |
| その他 | 書類取得、翻訳等の実費 |
この表で重要なのは、「全部を足せば全国共通の移行費用になる」わけではないことです。
特に登録支援機関の委託費は、特定技能1号で働いている間に継続して発生します。
移行手続に一度だけかかる費用と、移行後の年間運用費を分けて計算します。
監理支援機関から見積りをもらうときは「特定技能後」まで分けてもらう
育成就労から特定技能への移行を予定している会社では、現在の監理支援機関が登録支援機関としても対応している場合があります。
その場合でも、
「特定技能への移行一式○万円」
だけでは費用の内訳が分かりません。
少なくとも、
- 育成就労3年目までに必要な試験費用
- 特定技能への在留資格変更手続費
- 特定技能移行時の初期支援費
- 登録支援機関の月額支援費
- 更新申請時の費用
- 通訳・送迎・住居変更などが別料金になるか
を分けて出してもらいます。
育成就労中の監理支援費と、特定技能移行後の登録支援機関への委託費も別です。
同じ団体を引き続き利用する場合でも、料金体系がそのまま続くとは限りません。
最初に確認するのは「試験に合格済みか」と「自社支援できるか」
育成就労から特定技能への費用を出すときに、最初から「総額いくらですか」と聞くと会社ごとの差が大きくなります。
まず外国人ごとに、
特定技能1号へ移行するための技能・日本語試験はすでに合格しているか
を確認します。
次に会社側で、
特定技能1号の支援を自社で行うか、登録支援機関へ委託するか
を決めます。
そのあとに、
在留資格変更を自社で準備するか、外部へ依頼するか
を決めれば、自社に必要な費用が見えてきます。
育成就労から特定技能への移行費用は、単純に「1人○万円」ではなく、
公的手数料+不足している試験費用+申請支援費+特定技能移行後の支援費
に分けて見積もるのが実態に合っています。
まとめ
育成就労から特定技能1号への移行費用には、全国共通の定額料金はありません。
在留資格変更許可の公的手数料は必要ですが、技能・日本語試験は育成就労中に必要な試験へ合格済みであれば、移行のために同じ試験を受け直す必要はありません。
申請を行政書士等へ依頼すれば報酬が加わり、特定技能1号の支援を登録支援機関へ委託すれば、移行後も月額の支援委託費が継続します。
会社がまず行うのは、外国人ごとに試験の合格状況を確認し、現在の監理支援機関へ、
「特定技能への変更時に一度だけかかる費用」と「特定技能になった後に毎月かかる費用」を分けた見積り
を出してもらうことです。
そのうえで、自社支援や自社での申請準備が可能かを比較すると、実際に会社が負担する移行費用を把握しやすくなります。
出典
出入国在留管理庁|育成就労制度Q&A
出入国在留管理庁|在留資格「特定技能」
出入国在留管理庁|令和8年10月1日付け在留許可手数料の額の改定等について
出入国在留管理庁|1号特定技能外国人支援・登録支援機関について
出入国在留管理庁|特定技能制度における登録支援機関への支援委託料の支払額
出入国在留管理庁|育成就労制度運用要領 第4章 育成就労計画の認定等
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