育成就労と特定技能1号のどちらで外国人を採用するかは、「何年働いてもらえるか」より、採用時点でどの程度の技能を求めるかで考えると分かりやすくなります。
すでに一定の技能と日本語能力を持つ人を採用したいなら特定技能1号、入社時点では十分な技能がなくても、自社で働きながら3年間かけて特定技能1号水準まで育てたいなら育成就労が基本です。
ただし、2026年9月現在、育成就労制度の開始は2027年4月1日です。2027年4月より前に採用・就労を始めたい場合、育成就労を使うことはできません。
また、業種によっては育成就労を選べない場合もあります。最初に「自社の仕事で両制度を使えるか」を確認してから比較する必要があります。
育成就労と特定技能の大きな違いは採用時点の技能
出入国在留管理庁は、特定技能で受け入れる外国人を、一定の専門性や技能を持つ「即戦力となる人材」としています。
一方、育成就労では、入国時点で特定技能1号と同じ専門性や技能は求められません。原則3年間働きながら技能と日本語能力を高め、特定技能1号水準まで育成する制度です。
そのため、企業側から見ると次の違いがあります。
| 比較 | 育成就労 | 特定技能1号 |
|---|---|---|
| 採用する人材 | これから育成する人材 | 一定の技能を持つ人材 |
| 制度の目的 | 人材確保+人材育成 | 即戦力となる人材の確保 |
| 基本期間 | 原則3年 | 通算原則5年 |
| 採用時の技能 | 特定技能1号水準は不要 | 原則として技能試験等で確認 |
| 日本語 | 就労開始前までにA1相当以上の試験合格または所定の講習など | 原則として日本語試験の合格が必要 |
| 企業側の中心業務 | 採用+育成 | 採用+就労・生活支援 |
| その後 | 特定技能1号への移行を目指す | 条件を満たせば特定技能2号等へ進める分野もある |
「外国人を採用する」という点は同じでも、スタート地点が違います。
まず確認するのは「自社で育成就労を使えるか」
育成就労と特定技能は、すべての業種で自由に選べるわけではありません。
2026年1月23日に決定された分野別運用方針では、特定技能の対象となる特定産業分野と、育成就労の対象となる育成就労産業分野が定められています。
育成就労の対象分野は特定技能と原則として対応していますが、国内で3年間かけて技能を育成することになじまない分野は対象外です。
例えば、航空分野と自動車運送業分野は特定技能の対象ですが、育成就労の対象にはなっていません。
そのため、「未経験者を育成就労で採りたい」と考えても、自社で担当させる業務が育成就労の対象でなければ選択できません。
最初に会社の業種名だけではなく、外国人に実際に担当してもらう業務区分まで確認する必要があります。
すぐ現場で一定の仕事を任せたいなら特定技能
採用後、早い段階から一定水準の仕事を任せたい企業は、特定技能1号から検討する方が制度の目的に合っています。
特定技能1号では、原則として希望する分野の技能試験と日本語試験に合格した人などが対象になります。
日本語については、一般的には国際交流基金日本語基礎テストへの合格、または日本語能力試験N4以上が必要です。自動車運送業や介護など、分野・業務によって別の要件が設けられている場合があります。
ただし、「特定技能=採用した翌日から何でも任せられる」という意味ではありません。
試験で確認されるのは制度上必要な技能・日本語能力です。自社の商品、設備、作業手順、安全ルールなどについては、特定技能外国人であっても入社後の教育が必要です。
「即戦力」とは、教育が不要という意味ではなく、育成就労のように特定技能1号水準まで3年間かけて育てることを前提としていない、という違いです。
未経験に近い人材から育てるなら育成就労
採用時点では特定技能1号水準に達していない人を受け入れ、自社の現場で技能を身につけてもらうのであれば育成就労が選択肢になります。
育成就労では、原則3年間の育成就労計画を作り、特定技能1号への移行に必要な技能と日本語能力の習得を目指します。
企業には単に仕事を与えるだけでなく、「育てる側」としての体制が必要です。
例えば、主たる技能を身につけるための業務を担当させ、技能の習得状況を確認しながら、日本語能力の向上にも取り組む必要があります。
日本語についても、就労開始前までにA1相当以上の試験に合格するか、A1相当の日本語講習を100時間以上受けるなどの要件があります。
さらに育成期間中は、基本的にA2相当を目標とした日本語教育を進める仕組みになっています。
「人手が足りないから外国人を入れる」というだけではなく、現場に教育担当者を置き、3年間の育成を実際に回せるかまで考えて選ぶ制度です。
「長く働いてほしいから育成就労」とは限らない
育成就労は3年間、その後に特定技能1号へ移行する流れが想定されています。
そのため、育成就労から採用すれば、自社で育てた人にその後も特定技能として働いてもらえると考えたくなります。
しかし、育成就労から特定技能1号への移行は自動ではありません。
技能については技能検定3級や特定技能1号評価試験など、日本語については原則としてA2相当以上の試験に合格する必要があります。
現行の技能実習2号から特定技能1号への移行では一定の場合に試験免除がありますが、育成就労から特定技能1号へ移る場合は、技能と日本語の試験合格が移行要件になります。
さらに育成就労では、一定の要件を満たした場合、本人の意向による転籍も認められます。
転籍制限期間は分野ごとに1年以上2年以下の範囲で設定され、必要な技能・日本語能力などの条件もあります。
つまり、育成就労で採用すれば必ず3年間同じ会社で働き、そのまま特定技能として残ってくれる制度ではありません。
長期雇用を考える場合は、制度だけではなく、賃金、仕事内容、教育、職場環境、キャリアの見通しまで含めて定着を考える必要があります。
特定技能から採用しても長期雇用はできる
「長く働いてほしいなら育成就労、短期間なら特定技能」という分け方も正確ではありません。
特定技能1号は通算原則5年まで在留できます。
さらに、特定技能2号の対象分野で要件を満たせば、在留期間の更新に上限がなくなります。
すでに特定技能1号水準に達している人材を採用できるのであれば、最初から特定技能で採用し、その後のキャリアアップを支援する方法もあります。
長期雇用を希望することだけを理由に、必ず育成就労から始める必要はありません。
育成就労は「安く採用する制度」ではない
採用コストを理由に両制度を比較するときにも注意が必要です。
育成就労は入国時点で特定技能1号水準の技能を求めないため、「未経験者だから賃金を安くできる制度」と考えるのは適切ではありません。
育成就労でも特定技能でも、外国人の報酬について、日本人が同等の業務に従事する場合と同等以上とする考え方が設けられています。
さらに育成就労では、監理支援機関への費用、技能・日本語教育、試験、社内での指導など、育成するための負担も発生します。
特定技能1号でも、受け入れ企業には支援計画を作成し、生活や就労に関する支援を行う義務があります。自社で支援体制を整えられない場合は、登録支援機関へ委託する方法があります。
そのため、賃金だけで「どちらが安いか」を判断するのではなく、採用、申請、支援、教育、監理まで含めた総額で比較する必要があります。
自社はどちらで採用するか
判断するときは、最初に「採用したい外国人」ではなく「任せたい仕事」から考えます。
採用直後から一定水準の技能が必要な仕事であれば、その技能をすでに持つ特定技能人材を探す方法が合っています。
一方、現場で一から教えられる仕事で、会社にも教育する余力があり、3年間かけて人材を育てたいのであれば育成就労を検討できます。
整理すると次のようになります。
特定技能から検討しやすい企業
- 2027年4月より前から人材が必要
- 採用時点から一定の技能を求める
- 特定技能の試験要件を満たす人材を採用できる
- 一から技能を教える余力が少ない
- 自動車運送業や航空など、育成就労対象外の分野で採用する
育成就労から検討しやすい企業
- 2027年4月以降の採用を計画している
- 入社時点では特定技能1号水準に達していない人材も採用対象にしたい
- 3年間の育成計画を実行できる
- 現場で技能を教える担当者を確保できる
- 日本語教育を含めた育成体制を作れる
- 将来の特定技能1号への移行まで含めて人材育成を考えている
重要なのは、育成就労と特定技能を「どちらが得か」で選ばないことです。
迷ったら最初に「採用時点で必要な技能」を決める
どちらを利用するか迷ったら、まず採用予定の仕事について「入社初日からどの程度できてほしいか」を具体的に書き出します。
すでに特定技能1号水準が必要なら、特定技能人材を採用する方向で候補者を探します。
未経験に近い状態からでも採用でき、3年間かけて特定技能1号水準まで育てられるなら、育成就労を検討します。
そのうえで、自社の業務区分が両制度の対象か、採用希望時期、日本語教育・技能指導を行える体制があるかを確認します。
育成就労か特定技能かを先に決めるのではなく、「いつまでに、どの技能を持つ人が必要なのか」を決めてから制度を選ぶ方が、採用後のミスマッチを防ぎやすくなります。
出典
出入国在留管理庁|育成就労制度Q&A
出入国在留管理庁|特定技能制度及び育成就労制度の分野別運用方針
出入国在留管理庁|特定技能で日本で働くまでの流れ
出入国在留管理庁|1号特定技能外国人支援・登録支援機関について
出入国在留管理庁|特定技能外国人の雇用における注意点