育成就労の転籍申出が来たら誰が手続きをする?|会社・監理支援機関・本人の役割

育成就労外国人から「転籍したい」と言われた場合、会社が転籍手続をすべて行うわけではありません。

監理型育成就労では、役割を大きく分けると、本人が転籍希望を申し出る→現在の会社が申出を受けて監理支援機関へ通知する→監理支援機関が外国人育成就労機構への届出や事情確認、転籍支援を行う→転籍先の会社が新しい育成就労計画を申請するという流れです。

そのため、現在の会社が「転籍を認める・認めない」を決めたり、自社で転籍先の育成就労計画を変更したりする仕組みではありません。

2026年9月現在の制度内容を基に、申出を受けてから実際に転籍するまで、誰が何をするのかを整理します。

まず役割を分けるとこうなる

監理型育成就労で、外国人が現在の会社から別の会社へ転籍する場合の主な役割は次のとおりです。

関係者主な役割
育成就労外国人本人転籍希望の申出書を提出する
現在の会社申出書を受け取り、本人へ写しを渡し、監理支援機関へ通知する
監理支援機関事情確認、機構への届出、本人への通知、転籍要件確認、転籍先探しなどを行う
外国人育成就労機構申出・届出を受け、必要に応じて調査・転籍支援に関与する
転籍先の会社新しい育成就労計画を作成して認定申請する

現在の会社は「受付と監理支援機関への引継ぎ」、監理支援機関は「確認・届出・転籍支援」、本人は「転籍意思を正式に申し出る」という分担と考えると分かりやすくなります。

本人が最初にするのは「転籍希望の申出」

転籍手続の出発点は、育成就労外国人本人による申出です。

外国人は、

  • 現在の受入れ企業
  • 監理支援機関
  • 外国人育成就労機構

のいずれかへ転籍希望を申し出ることができます。

正式な申出は書面で行います。

参考様式として「育成就労実施者の変更希望の申出書」が用意されており、本人の氏名・国籍・生年月日、現在の会社、転籍を希望する理由などを記載します。

本人が最初に「会社を変わりたい」と口頭で相談してきた場合、それだけでは法律上の正式な申出にはなりません。

会社または監理支援機関は、申出書を提出するよう本人へ案内します。

会社へ申出が来たら、会社は3つの対応をする

監理型育成就労で現在の会社が本人から申出書を受け取った場合、会社側の初動は比較的明確です。

行うのは主に次の3つです。

  1. 申出書の内容を確認する
  2. 申出書の写しを本人へ交付する
  3. 「育成就労実施者の変更希望の申出受理通知」を作成し、監理支援機関へ通知する

会社が申出書を受け取った後、自社で外国人育成就労機構への一連の転籍手続を完結させるわけではありません。監理型では、ここから監理支援機関が中心となって動きます。

そのため社内では、外国人と接した上司だけで処理せず、育成就労責任者へ速やかに情報を上げる必要があります。

申出書を受け取った社員が勝手に保留してはいけない

外国人は、必ず社長や育成就労責任者本人へ申出書を渡さなければならないわけではありません。

会社の役職員へ提出すれば足り、申出を受け取った職員は速やかに育成就労責任者へ報告する必要があります。

郵送や外部監査人などを介した提出も認められています。申出書の受取りを拒否したり、廃棄したりすることは認められていません。

そのため受入れ企業では、外国人と日常的に接する現場責任者や人事担当者にも、

「転籍申出書を受け取ったら誰へ渡すか」

を事前に決めておいたほうがよいでしょう。

会社から通知を受けた後は監理支援機関が中心になる

監理支援機関は、転籍申出について関係機関との連絡調整を担います。

監理支援機関が行う主な対応は、

  • 申出内容と事実関係の確認
  • 外国人育成就労機構への「申出受理届出」
  • 本人への「対応通知書」の交付
  • 現在の会社への情報共有
  • 転籍要件の確認
  • 転籍先探しなどの支援
  • 必要に応じた育成就労実施困難時届出

です。

つまり、会社が監理支援機関へ通知した後に「会社と本人だけで転職先を探して進める」という流れではありません。

監理支援機関が制度上の転籍手続の中心になります。

監理支援機関は最初に「なぜ転籍したいのか」を確認する

転籍希望を受けた監理支援機関は、いきなり本人意向転籍の条件だけを見るわけではありません。

まず、暴力、パワーハラスメント、重大な雇用契約違反など「やむを得ない事情」に該当し得る事実がないかを確認します。

やむを得ない事情が確認されなければ、次に本人意向転籍について、

  • 転籍制限期間
  • 技能水準
  • 日本語能力
  • その他の転籍要件

を確認します。

外国人が「給与が説明と違うから転籍したい」と話している場合、会社側では単なる本人希望と考えていても、監理支援機関による確認で「やむを得ない事情」に関係する可能性があります。

会社だけで転籍理由を分類して手続を止めないことが重要です。

本人意向なら監理支援機関が転籍先探しを支援する

本人意向転籍の要件に該当する可能性があると確認された場合、監理支援機関は「育成就労実施者変更に係る調査結果報告」を機構へ提出し、本人の希望に応じた職業紹介などの転籍支援を行います。

転籍制限期間については、申出時点ですでに経過していなければならないわけではありません。転籍先の新しい育成就労計画が認定される時点で満たせばよいため、申出時点で期間が残っていても転籍先探しの支援を進める必要があります。

監理支援機関だけで転籍先を確保することが難しい場合は、外国人育成就労機構へ「育成就労継続のための支援要請書」を提出して支援を求める仕組みもあります。

したがって、現在の会社が新しい勤務先を探すことが転籍手続の中心ではありません。

本人が自分で転籍先を自由に決めればよいわけでもない

本人意向転籍では、本人が一般の転職サイトや民間の人材紹介会社を自由に利用して転籍すればよい制度ではありません。

本人意向転籍の要件には、民間の職業紹介事業者による職業紹介等を受けていないことも含まれています。

転籍では、監理支援機関や外国人育成就労機構など、制度で予定された仕組みの中で転籍先を探していきます。

外国人が自分で「次の会社を見つけてきました」と言った場合も、そのまま退職・入社へ進めるのではなく、監理支援機関へ確認する必要があります。

転籍先が決まった後の認定申請は「新しい会社」が行う

転籍先候補が決まっても、その時点で外国人が新しい会社へ移れるわけではありません。

転籍先となる会社が、その外国人について新しい育成就労計画を作成し、外国人育成就労機構へ認定申請を行います。認定を受けて初めて、制度上の転籍へ進むことができます。

つまり、新しい育成就労計画を申請するのは現在の会社ではありません。

手続主体
転籍希望を申し出る外国人本人
現在の会社から監理支援機関への通知現在の会社
機構への申出受理届出監理支援機関
転籍理由・要件の確認主に監理支援機関
転籍先探しの支援主に監理支援機関
新しい育成就労計画の認定申請転籍先の会社
新しい計画の認定外国人育成就労機構

「現在の会社が転籍申請をする」と考えると手続を混同しやすくなります。

本人にも「申出したら後は全部お任せ」ではない

監理支援機関が中心になって支援するとはいえ、本人が何もしなくてよいわけではありません。

本人はまず正式な申出を行い、監理支援機関による事情確認に応じます。

本人意向転籍であれば、分野ごとに求められる技能・日本語能力を満たす必要があり、転籍先を選ぶ際にも本人の希望を踏まえて進められます。

また、本人自身の意思で転籍をやめる場合は、「育成就労実施者の変更希望の申出の取下げ書」が用意されています。

会社が一方的に申出を取り下げる手続ではありません。

本人が監理支援機関へ直接申し出た場合は会社の流れが逆になる

外国人は現在の会社を経由せず、監理支援機関へ直接申し出ることもできます。

この場合、監理支援機関が申出書を受け取り、内容・事実関係を確認したうえで機構へ届出を行い、現在の会社へ「申出があった」という通知をします。

流れは、

本人
→監理支援機関
→外国人育成就労機構

と進み、監理支援機関から現在の会社へ通知が入ります。

つまり会社が本人から直接聞いていなくても、監理支援機関から突然「転籍希望の申出がありました」と通知される可能性があります。

本人が外国人育成就労機構へ直接申し出ることもできる

会社や監理支援機関へ相談しにくい場合には、外国人育成就労機構へ直接申し出ることもできます。

機構が申出を受けた場合は、機構から監理支援機関と現在の会社へ通知されます。

その後、監理支援機関に対して事実関係の調査が依頼されることがあり、監理支援機関は、やむを得ない事情の有無や本人意向転籍の要件などを確認し、「育成就労実施者変更に係る調査結果報告」を機構へ提出します。

したがって、転籍申出の窓口がどこであっても、監理型では最終的に監理支援機関が事情確認と転籍支援で重要な役割を担います。

やむを得ない事情があれば追加の届出が必要になる

転籍理由を確認した結果、暴力やハラスメントなど、やむを得ない事情による転籍が認められる可能性がある場合には、通常の申出受理届出だけで終わらないことがあります。

育成就労の継続が困難になった場合は「育成就労実施困難時届出書」を提出し、円滑な転籍のための支援を行う必要があります。

本人意向転籍でも、実際に外国人が離職して現在の会社で育成就労を続けられなくなれば、同様に育成就労実施困難時届出が必要になる場合があります。

この判断もあるため、会社だけで処理せず、申出後は早い段階で監理支援機関へつなぐ必要があります。

単独型では会社自身が機構へ届け出る

ここまでの流れは、監理支援機関を利用する「監理型育成就労」が中心です。

海外の子会社等の職員を一定の要件で受け入れる単独型育成就労では、監理支援機関が入りません。

そのため、単独型で会社が本人から申出を受けた場合は、会社自身が、

  • 申出書の内容・事実関係の確認
  • 本人への申出書の写しの交付
  • 外国人育成就労機構への申出受理届出
  • 本人への対応通知書の交付
  • 必要に応じた育成就労実施困難時届出

などを行います。

「会社は機構へ直接届け出ない」というのは監理型の場合です。

自社が監理型か単独型かによって、ここは分けて考える必要があります。

会社が最初にするのは「申出書を受けて監理支援機関へ渡す準備」

監理型で外国人から突然「転籍したい」と言われた場合、会社がその場で転籍要件をすべて判定する必要はありません。

最初に確認するのは、口頭の相談なのか、正式に転籍を希望しているのかです。

正式に希望しているのであれば、申出書の提出を案内します。

申出書を受け取ったら内容を確認して本人へ写しを渡し、育成就労責任者へ報告したうえで、監理支援機関へ申出受理を通知します。

その先の事情確認、機構への届出、本人意向転籍の要件確認、転籍先探しなどは監理支援機関と連携して進めます。

会社が最初に判断するのは「転籍させるかどうか」ではなく、「申出を正式な手続へつなぐこと」です。

まとめ

育成就労の転籍手続は、一人の担当者や一つの機関が最初から最後まで行う仕組みではありません。

監理型では、本人が転籍希望を書面で申し出、現在の会社が申出を受けた場合は本人へ写しを渡して監理支援機関へ通知します。

その後は監理支援機関が、機構への届出、転籍理由・要件の確認、本人への説明、転籍先探しなどを中心となって進めます。

転籍先が決まった後、新しい育成就労計画を申請するのは転籍先の会社です。

受入れ企業としては、外国人から申出が来てから役割分担を調べ始めるのではなく、「申出書を誰が受け取り、社内の誰へ報告し、どの監理支援機関担当者へ通知するか」まで事前に決めておくと初動で迷いにくくなります。

出典

出入国在留管理庁|育成就労制度Q&A

出入国在留管理庁|育成就労制度 運用要領

出入国在留管理庁|育成就労制度運用要領のポイント

外国人技能実習機構|育成就労制度様式一覧