育成就労の転籍者を採用したい|受入れ企業に必要な条件を確認

育成就労外国人の転籍者を採用したい場合、通常の育成就労の受入れ条件を満たしているだけでは足りない場合があります。

特に、外国人本人の希望による「本人意向転籍」を受け入れる企業には、優良な育成就労実施者であること、転籍者の割合が上限以内であること、転籍元へ初期費用の一部を補填することなど、追加の条件があります。

一方、暴力・ハラスメントなど「やむを得ない事情」による転籍では、本人意向転籍とは一部の条件が異なります。

そのため、転籍者を採用したい企業は、最初に「本人意向転籍なのか、やむを得ない事情による転籍なのか」を確認する必要があります。

転籍者なら誰でも採用できるわけではない

育成就労の転籍には、大きく2種類あります。

転籍の種類主なケース
本人意向転籍一定期間働いた本人が、自分の希望で別の会社へ移る
やむを得ない事情による転籍暴力・ハラスメント、重大な契約違反などで現在の会社で継続できない

どちらの場合も、転籍後に担当する仕事は原則として転籍前と同じ業務区分でなければなりません。

例えば、同じ「製造業」だから移れるという判断では不十分です。

外国人が転籍前に認定を受けていた育成就労計画の業務区分と、自社で担当させたい業務区分が同じかを確認します。

まず通常の受入れ企業としての条件を満たす

転籍者を採用する企業も、まず通常の育成就労実施者としての要件を満たしている必要があります。

例えば、

  • 労働・社会保険・税に関する法令を遵守している
  • 原則として分野別協議会へ加入している
  • 育成就労責任者・育成就労指導員・生活相談員などの体制を整えている
  • 同種業務の日本人等を不適切に離職させていない
  • 受入れ人数枠を超えていない
  • 分野独自の上乗せ基準を満たしている

といった条件があります。

「国内にすでにいる外国人だから、海外から新規採用するより簡単に受け入れられる」とは限りません。

転籍者についても、新しい企業で育成就労を行わせるための育成・支援体制が審査されます。

本人意向転籍では「優良な企業」である必要がある

本人意向で転籍する外国人を採用する場合、転籍先は「優良な育成就労実施者」である必要があります。

優良かどうかは、

  • 技能・日本語能力の修得実績
  • 育成体制
  • 外国人の待遇
  • 出入国・労働法令の遵守状況
  • 行方不明などの問題発生状況
  • 相談・保護・支援体制
  • 地域社会との共生への取組

などを総合的に評価して判断されます。

ただし、「過去に優良認定を受けた企業でなければ応募できない」という意味ではありません。

本人意向転籍者について新しい育成就労計画を申請するときに、優良要件を満たしていると認められれば、本人意向転籍者を受け入れることができます。

転籍者を採用したい企業は、まず監理支援機関と自社が優良要件を満たせるかを確認することになります。

初めての育成就労外国人を「転籍者だけ」で始めることはできない

本人意向転籍では、もう一つ見落としやすい条件があります。

新しい育成就労計画が認定される時点で、その企業がすでに通常の育成就労計画に基づく育成就労外国人を受け入れている必要があります。

つまり、現に受け入れている育成就労外国人が転籍者等だけという状態では、本人意向転籍者の新しい計画認定を受けることができません。

例えば、

「これまで育成就労外国人を1人も受け入れていない会社が、最初の1人として本人意向転籍者だけを採用する」

という形にはできません。

本人意向転籍者の採用を人材確保の入口にしようとしている企業は、ここを先に確認しておく必要があります。

本人意向転籍者は全体の3分の1まで

本人意向で転籍してきた外国人の人数にも上限があります。

転籍後の育成就労外国人全体に占める本人意向転籍者の割合が、3分の1を超えてはいけません。

例えば転籍後の人数が、

  • 育成就労外国人6人、そのうち本人意向転籍者2人 → 上限以内
  • 育成就労外国人6人、そのうち本人意向転籍者3人 → 3分の1を超えるため不可

となります。

この計算には、新たに採用しようとしている転籍者も含めます。

「受入れ人数枠に1人空きがある」だけでは判断できません。

通常の受入れ人数枠と、本人意向転籍者の3分の1ルールの両方を満たす必要があります。

大都市圏の企業が地方から採用する場合は6分の1も確認する

本人意向転籍には、外国人が地方から大都市圏へ集中することを抑えるための追加ルールもあります。

転籍先となる企業の本店所在地が「指定区域」の外、つまり制度上の大都市圏側にあり、指定区域内の地方から本人意向転籍者を受け入れる場合、その人数は原則として育成就労外国人全体の6分の1以内でなければなりません。

ただし、転籍後の育成就労外国人が5人以下となる小規模企業では、3分の1ルールを満たすことを前提として1人まで受け入れられる特例があります。

地域の判定は実際の勤務場所ではなく、原則として育成就労実施者である法人の本店所在地で行います。

転籍元と同じ業務区分で採用する

転籍者採用では、外国人の経験が自社で役立ちそうかだけでなく、制度上「同じ業務区分」かを確認します。

育成就労は原則3年間で特定技能1号水準まで育成する制度のため、転籍によって全く別の業務区分へ移ることは認められていません。

同じ業務区分内であれば、育成の目標となる主たる技能を変更できる場合はあります。

ただし、人材育成の継続性から、転籍前後で主たる技能を変更することは望ましくないとされています。

採用面接の前に、本人の現在の在留資格だけでなく、

現在認定されている育成就労計画の分野・業務区分

を確認しておく必要があります。

本人側も転籍条件を満たしている必要がある

本人意向転籍では、受入れ企業側が条件を満たすだけでは足りません。

外国人本人にも、

  • 転籍制限期間を経過している
  • 分野で定められた技能水準に達している
  • 必要な日本語能力を有している
  • 原則3年を超える延長期間中ではない

といった条件があります。

したがって、採用を決める前に、

「いつから現在の会社で育成就労をしているか」

「どの技能試験・日本語試験に合格しているか」

を確認します。

転籍制限期間を経過していなければ、本人が転籍を希望していても通常の本人意向転籍としてすぐ採用することはできません。

一般の転職エージェント経由では採用できない場合がある

本人意向転籍では、マッチング方法にも制限があります。

監理支援機関、外国人育成就労機構、ハローワークなど制度上認められた仕組み以外の民間職業紹介事業者等が外国人との雇用契約の成立に関与している場合、その本人意向転籍者の受入れは認められません。

そのため、

「国内外国人専門の転職会社から転籍者を紹介してもらう」

という通常の外国人採用と同じ進め方ができるとは限りません。

監理型育成就労で転籍者を採用したい場合は、まず利用している監理支援機関へ「本人意向転籍者を受け入れたい」と相談するのが基本です。

転籍元へ初期費用の一部を支払う場合がある

本人意向転籍では、転籍先企業が転籍元企業へ初期費用の一部を補填する仕組みがあります。

外国人の取次ぎ・育成に要した費用について定められた基準額に、転籍元で育成就労を行った期間に応じた割合を掛けて計算します。

1回目の本人意向転籍では、転籍元での期間に応じて、

転籍元での育成就労期間按分率
1年以上1年6か月未満6分の5
1年6か月以上2年未満3分の2
2年以上2年6か月未満2分の1
2年6か月以上4分の1

となっています。

新しい育成就労計画の認定申請では、必要な補填額を支払うことを誓約し、認定後6か月以内に支払ったことを証明する書類を機構へ提出する必要があります。

転籍者はすでに国内にいるため「海外から採用するより初期費用がゼロ」とは限りません。

転籍者の採用でも新しい育成就労計画が必要

転籍前の会社で認定されていた育成就労計画を、そのまま新しい会社へ移すことはできません。

転籍先となる企業が、その外国人について新しい育成就労計画を作り、外国人育成就労機構へ認定申請します。

計画には、転籍後にどの業務へ従事させるのか、残りの期間でどのように技能・日本語能力を育成するのかなどを反映します。

そのため、

面接 → 採用決定 → 翌日から勤務

という一般的な中途採用と同じ流れではありません。

計画認定など必要な手続を終えてから、転籍先で育成就労を開始します。

「やむを得ない事情」の転籍では条件が違う

暴力・ハラスメント、重大な契約違反など、本人に「やむを得ない事情」がある転籍では、本人意向転籍の追加条件をそのまま当てはめません。

法令上、本人意向転籍で求められる転籍先の追加基準について、やむを得ない事情が認められる場合には例外が設けられています。

例えば、本人意向転籍で問題になる転籍制限期間、技能・日本語能力、優良要件などについて、やむを得ない事情による転籍では扱いが異なります。

一方で、どの会社でも自由に受け入れられるわけではありません。

転籍後も同じ業務区分で育成就労を継続することや、通常の育成就労実施者として適正に受け入れられる体制などは確認が必要です。

そのため「転籍者を採りたい」と相談を受けたら、本人意向転籍なのか、やむを得ない事情による転籍なのかを最初に確認します。

転籍者を採用したい企業は何から確認する?

採用したい外国人が見つかったら、最初に内定を出すのではなく、監理支援機関と次の順番で確認すると整理しやすくなります。

まず、その外国人の現在の育成就労計画を見て、

分野・業務区分、就労開始時期、転籍理由

を確認します。

本人意向転籍なら、次に、

本人が転籍制限期間と技能・日本語要件を満たしているか

を確認します。

そのうえで自社について、

通常の受入れ人数枠 → 優良要件 → 現在の育成就労外国人の構成 → 本人意向転籍者3分の1ルール → 地方から大都市圏への6分の1ルール → 初期費用補填

を確認します。

ここまで問題がなければ、雇用条件を固め、その外国人について新しい育成就労計画の認定申請へ進みます。

転籍者は「国内にいる経験者をすぐ採用できる仕組み」ではありません。

特に本人意向転籍では、自社が転籍先になれる企業なのかを先に確認してから採用手続へ進むことが重要です。

出典

出入国在留管理庁|育成就労制度Q&A

出入国在留管理庁|育成就労制度運用要領

出入国在留管理庁・厚生労働省|育成就労制度運用要領のポイント

出入国在留管理庁・厚生労働省|本人意向による転籍の要件